最初は水素などの軽い元素しかなかった
宇宙が誕生したのは137億年程前と言われています。「ビッグバン」と呼ばれる大爆発で始まった宇宙ではしばらくすると元素が形作られるようになりました。つまり原子が誕生したのです。
しかし誕生したばかりの宇宙には、水素をはじめとした元素の中でも軽いものしか存在しませんでした。一方で現代の私たちの身の回りには沢山の元素が存在しています。リチウム、窒素、鉄、アルミニウム、ニッケル…様々な物質がこの世界には存在しています。
では最初水素しか無かった宇宙で、水素以外の様々な物質はどうやって作られたのでしょうか。
夜空を見上げてみると星が見えますよね。それらは太陽のように自ら光り輝く「恒星」です。
恒星が光っているのは、何かものを燃やしているわけではありません。原子核同士がくっつく「核融合」という現象によって大きなエネルギーを放っているのです。
星は巨大な「元素の工場」
どんな物質にも何かを引き寄せる「重力」があります。それは極小サイズの原子でも同じです。宇宙が誕生した時にあった水素もお互いがどんどん集まりだし、やがて巨大なガスのカタマリとなりました。
余りにも巨大なカタマリとなった水素ガスの中心部では、水素の原子同士がおしくらまんじゅうのように圧縮されてゆきます。原子同士は反発しあうという性質がありますが、圧縮するエネルギーのほうが大きくなりすぎると、原子同士が結合してしまいます。これが核融合です。
核融合が起きるとエネルギーを放出すると同時に、新しい、より重い元素が作り出されます。そして新しく作り出された元素も重力による圧縮でさらに核融合を起こし、もっと重い元素が作られます。こうして星の中ではあたらしい元素がどんどん作られていくのです。
星で作れるのは「鉄」まで
恒星でどんどん重い元素が作られてゆき、やがては「鉄」にまで達します。しかし鉄より重い元素は星で作ることができません。星は核融合反応で得られるエネルギーで光り輝き、また核融合を起こすためのエネルギーとしてきましたが、鉄よりも重い元素は核融合をすると「エネルギーを奪ってしまう」のです。
鉄より重い元素はこの世の中にたくさんあります。金や銀などのほか、原子力発電の燃料となるウランなどはどのようにしてできたのでしょうか。答えは「超新星元素合成」や「中性子星同士の衝突」にあるとされています。
「超新星元素合成」と「中性子星合体」
重さが太陽の数倍以上もある恒星は、その寿命を迎える時に大爆発を起こします。これが「超新星爆発」です。この時に膨大な熱エネルギーと中性子と呼ばれる粒子が大量に放出されます。
膨大な熱エネルギーによって鉄よりも重い元素の合成が可能になるほか、原子核が大量の中性子を吸収することで重い元素が一瞬の間に生み出されます。
原子核に吸収された中性子は、電子を放出して陽子へと変わる「ベータ崩壊」を起こすことでその原子核が新しい次の元素へと変わるのです。
また超新星爆発で発生した「中性子星」と呼ばれる星同士がぶつかる事でより重い元素が合成されるとされています。
こうした超新星爆発による一瞬の間に新しい元素が生み出される現象は「r過程」と呼ばれています。対して、恒星内部でも中性子の吸収とベータ崩壊によってより重い元素がゆっくりと生み出される事があります。これは「s過程」と呼ばれています。
こうした様々な核反応が星の中で起きることで多くの元素が生み出されたために、今私たちの身の回りには沢山の元素が存在しているのです。