核分裂と原子力発電のしくみ

原子核が分裂する現象である「核分裂反応」
その際には莫大なエネルギーが放出されます。
それを利用したのが原子力発電ですが、その仕組みに迫ってみましょう。

「核分裂」って何?

トリウムやウラン、プルトニウムと呼ばれる物質は非常に重い元素であるため不安定な状態にあります。

これらの物質は放射性物質の1つなのですが、中性子という粒子が吸収される事でその原子核が分裂してしまう事があります。これが核分裂反応なのです。

核分裂とはウランやプルトニウムの原子核が2つに分かれること

核分裂が起きると、2つに分かれた原子核の破片(核分裂生成物)と共にエネルギーが発生し、さらに中性子も同時に2、3個飛び出します。この中性子が次の核分裂を引き起こし、ドミノ倒しのように連鎖反応が起きるのです。

この核分裂の連鎖反応が持続的に起きる状態のことを「臨界」と呼んでいます。

核分裂を安定的に連続させる装置
「原子炉」

原子炉というのは核分裂の連鎖反応を維持・制御するための装置なのです。そうすることで核分裂によって生まれるエネルギーを安定的に取り出せるのです。

原子炉では核分裂を起こしやすいウランやプルトニウムを核燃料として使い、その核分裂によって生み出される熱エネルギーを発電に使っているのです。

原子炉には「制御棒」という装置が組み込まれており、これを出し入れすることで核分裂の進み具合を制御しています。

原子炉は核分裂を安定的に維持する装置

原子炉の中でも特に原子力発電所で広く一般的に使われている「軽水炉」というタイプの原子炉では、原子炉の中にウランやプルトニウムといった核燃料の他に「」が入っています。この水は核分裂で発熱する原子炉を冷却し、その熱を運び出す役割があります。

また、この水は核分裂を引き起こしやすくするための「減速材」という役割も同時に担っています。核分裂によって発生する中性子はスピードが早く、核分裂の連鎖反応を繋げにくいのでスピードを落とさせ、核分裂の連鎖反応を起こりやすくしているのです。

核燃料のしくみ

核燃料として使われるウランやプルトニウムは、そのままの状態で原子炉に放り込まれているわけではありません。

ウランやプルトニウムは本来金属なのですが融点が数百度程度と低く、核分裂によって高温になる原子炉では溶けてしまいやすく、化学的にも腐食しやすいため安全性に問題があります。

そのため一般的な原子力発電所ではセラミック状に焼き固めて、溶けたり飛び散ったりしにくくした「二酸化ウラン」や、「混合酸化物燃料(ウランとプルトニウムを混ぜたもの。MOX。)」と呼ばれるものがが利用されています。

核燃料の仕組みや構造

核燃料に含まれる全てのウランやプルトニウムが核燃料として機能するわけではありません。一口にウランやプルトニウムと言っても、それぞれ「核分裂しやすいもの」と「核分裂しにくいもの」があるのです。

原子力発電所で用いられる「核分裂しやすいウラン」は「ウラン235」と呼ばれ、これがウラン全体の3パーセント程度に使用されています。残りの97パーセントは「核分裂しにくいウラン」で「ウラン238」と呼ばれています。この最後の数字はその原子核に含まれている粒子の数を表しています。

多くの原子力発電所では、核燃料としては本来「二酸化ウラン」のみが利用されてきましたが、原子炉の中で生み出されたプルトニウムを回収し、新たな核燃料として再利用する方法として開発されたのが「混合酸化物燃料(MOX)」です。また、窒素や炭素と結合させたタイプの燃料や、合金として利用するタイプの燃料も存在します。

どうやって発電しているの?

原子力発電所が電気を作るしくみは蒸気機関です。つまり原子炉の熱で水を沸騰させ、その蒸気でタービンという羽根車を回転させ、そして発電機を動かすというものです。

軽水炉においては、どの部分で蒸気を作るかによって「沸騰水型」と「加圧水型」に分類できます。

原子炉の熱でタービンを回し、発電機を回して発電する

原子力発電のメリットは、ものを燃やすわけではないため二酸化炭素を排出しないところにあります。また「核分裂反応」という現象を利用しているため、非常に莫大なエネルギーを安定して取り出せることにあります。

少ない量の核燃料で十分なエネルギーを得られるため、輸送や備蓄といった面でも便利なのです。

「核のゴミ」問題は?

原子炉を運転し、核燃料をどんどん使っていくとやがて核分裂の連鎖反応を維持できなくなり、その核燃料は交換する必要が出てきます。そしてその使い終わった核燃料は「使用済み核燃料」と呼ばれます。

この使用済み核燃料は核分裂生成物によって非常に強い放射能を持ち、危険な状態であるため放置しておくわけにはいきません。これは「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれています。

そこで「再処理」という工程によって、不純物を除去して核燃料としてまだ使える部分を再利用しつつ、高レベル放射性廃棄物自体の容積を減らそうという取り組みが行われていますが、ゼロにすることはできないため、具体的にどこで処分するかはきちんと考えなければなりません。

放射性廃棄物の対策については考慮しなければならない

再処理では、放射性廃棄物を減らして原子力発電全体の安全性を高めるだけでなく、核燃料を再利用することで資源を有効活用するというサイクルを実現することから「核燃料サイクル」と呼ばれています。

最後に残った強い放射能を持つゴミは「ガラス固化処理」と呼ばれる工程によってガラスと混ぜて安定した状態に固められ、地下深くの安定した地層に処分することとなっています。核燃料サイクルはできるだけコストを抑えながら、安全に最終処分まで行えるようにする必要があります。

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