- 宇宙と原子力
- 物理学における力の基礎について
原子力エネルギーの例
原子力は、核分裂や核融合によって生じる膨大なエネルギーのことです。第二次大戦中に核兵器として登場、戦後には電気を作り出す原子力発電、医学における放射線治療、農業における害虫防除や本種改良などに用いられており、現在では深海探索に加えて宇宙探索への活用が検討されています。原子力エネルギーは、化石燃料などに比較して圧倒的な化学反応により、膨大なパワーを得られるという特徴を持つため、エネルギー資源を効率的に生み出します。
原子力は様々な分野で活躍しており、我々の生活になくてはならない存在となりました。原子力発電が稼働すると停止するまで数ヶ月以上も休むことなく電気を生みだし続けるため、安定した電力を供給します。安価な夜間電力を蓄電池に充電したり、タイマーを使って生活家電を使用すれば、光熱費の削減に繋げられます。またその間に、火力発電を休止させ点検できるため、発電設備を総合的に用できるのもメリットです。
医学では放射線を使ったがん診断や治療が進められています。レントゲン検査やMRI、CT検査などではごく限られた放射線を用いることで、患部や病変をいち早く確認できます。さらにがん細胞のDNAにダメージを与えて破壊する放射線治療は、抗がん剤よりも心身への負担が少ないため、多くの医療機関に採用されています。
農業分野では、品種改良で活躍するようになりました。種苗の細胞に放射線を照射してダメージを与え、人工的に突然変異を発生させ、寒冷地や病害虫に強い品種を生みだすものです。自然に起こる突然変異よりも効率的に、新品種の開発を進められます。また本来は存在しないDNAを他の植物や生物から移植する遺伝子組み換え技術と違って、同一種の遺伝子をベースにしているため、自然への影響もほとんどありません。
探索分野でも原子力は利用されています。1970年に就役したアメリカの原子力深海潜航艇NR-1は、軍事関連の海底調査とともに軍民が関わる航空事故でも活躍、深海で破損した残骸を回収し事故原因の解明に貢献しました。また月や火星を含む宇宙探査では、原子力を動力とするロケットや人工衛星や宇宙探査機などに搭載する原子力電池の開発も進められています。
電力分野では、核融合を巡る研究開発が熱気を帯びるようになりました。核分裂をベースとする既存原子力以上のエネルギーを生みだしながら安全性も高く、温暖化ガスも排出しない未来の発電システムは、将来の電力供給を決定づけると指摘されています。地球温暖化対策が求められる中、原子力の可能性を広げる努力が求められています。