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原子力発電の核分裂と核融合!その仕組みや違いは?
日本や他の多くの国では商業用の原子力発電が稼働していて、家庭や会社で使用する電力の一部が賄われています。火力発電や水力発電の仕組みであれば小学生でも簡単に理解することができますが、原子力発電のメカニズムを知るためには原子物理学の知識が必要です。
原子力発電には大きく分けて2種類の発電法が用いられていて、電気を生み出す方法や使用される核燃料に違いがあります。日本を含めて世界中の多くの電力会社が用いている方法は、核燃料が核分裂を起こす際に発生する膨大な熱エネルギーを使ってお湯を沸かし、得られた水蒸気でタービンを回転させて発電する方式です。これは火力発電のボイラーの部分を原子炉に置き換えたようなもので、1基の原子炉で100万kWもの出力があります。核分裂を起こすメカニズムは非常に複雑ですが、燃料に使用されるウラン235の原子核に中性子を衝突させると、原子核が分裂して別の元素に変化します。何個かに分裂した後の全ての原子の重さは元のウラン235よりも僅かに軽く、質量が減った分が熱エネルギーとして放出されてお湯を沸かすのに用いられるという仕組みです。
原子炉でお湯を沸かす方法とは別の発電法として、原子力電池と呼ばれる物があります。これは核燃料が自然に核分裂を起こす性質(核崩壊)を応用したもので、分裂する際に発生する熱エネルギーを半導体素子を使って直接電気に変換します。熱電変換素子の一端を高温にしてもう片方を低温にすると熱が移動しますが、この時に電気が発生します。原子力電池の熱源は核崩壊起こしやすいプルトニウム238が使われることが多く、数十年間にもわたりゆっくりと核崩壊をして発熱し続けます。原子力電池は太陽から離れた場所を飛行する宇宙探査機に使用されていて、ソーラーパネルが使えないような場所でも電力を供給することができます。
現在は原子力発電所や原子力電池にはウランやプルトニウムの核分裂反応が使われていますが、核融合を用いた発電も研究されています。これは水素などの軽い元素の原子核が合体して重い元素に変化する際に熱エネルギーを放出する性質を応用したもので、太陽などの恒星の内部で起こっている核反応です。核融合を起こさせるためには1億℃以上に加熱させる必要があるため、金属などの容器に閉じ込めて核反応を起こさせることはできません。核融合発電を行うためには強い磁場を使用して空間に核燃料を閉じ込める必要がありますが、これは技術的なハードルがとても高いので現在はまだ実用化されていません。