中性子爆弾と同様、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)の弾頭に使用されたことのあるものです。アメリカのスパルタンABMに搭載されたW71核弾頭(核出力5メガトン)は、宇宙空間で飛来してくる弾道ミサイルを撃ち落とすために開発されました。
弾道ミサイルにおいて核弾頭を搭載している再突入体(RV)は宇宙空間から大気圏再突入時の高温高圧の環境から核弾頭を守るためのアブレータを搭載しています。W71核弾頭は炸裂した際に強力なX線を生じさせ、核弾頭のアブレータを瞬間的に加熱、損傷させることで弾道ミサイルを撃墜します。
中性子線と同様に、宇宙空間では大気中と比較して核爆発と共に生じたガンマ線やX線は減衰の影響を受けづらく、影響を与える範囲を広く持たせることができます。
「W71」核弾頭(Credit:USDoE)
起爆した際に、セカンダリから高エネルギーのX線を放出できるよう、セカンダリのタンパーにはウランではなく金が用いられているという説があります。金はウランよりもX線を若干透過させやすいため、これにより外部に放射されるX線を増大させているのです。
物質の原子番号は大きくなるほど、X線を遮蔽しやすくなるほか、物質が固有に持つ特性X線の波長が短くなるというモーズリーの法則があります。熱核弾頭の外郭部は通常は核出力を向上させるためにウランが用いられますが、これを原子番号の小さい金に置き換えることによってX線の波長が長くなり(軟化)、またX線が核弾頭から放出されやすくなるという特徴があります。