キュリオシティを打ち上げるアトラスV541型ロケット(Credit:NASA)
打ち上げは2011年11月26日にケープ・カナベラル空軍基地のLC-41射場から、アトラスV541型ロケットで打ち上げられました。アトラスVは米ロッキード・マーティン社と米ボーイング社の合弁会社であるユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社が運用するアメリカのアトラスロケットシリーズの最新型です。541は直径5メートルのペイロード保護用フェアリングを使用し、固体ロケットブースタ(SRB)が4基、二段目のセントール・ロケットのエンジンが1基であることを表しています。ロケットの全長は58m、重量にして531tでした。
アトラスV541型は第一段にケロシンと液体酸素を推進剤とするロシア製のRD-180エンジンを搭載しており、このエンジンは2つの燃焼室を持ち、燃料と酸化剤の比率が1:2.72と酸素リッチの予備燃焼を行う二段燃焼サイクルのエンジンで415万2000ニュートンの出力を持ちます。
4本が用いられた米エアロジェット社製のSRBは過塩素酸アンモニウム(NH4ClO4)と末端水酸基ポリブタジエン(HTPB)にアルミニウムを添加した固体燃料を使用し、合計で544万ニュートンものエネルギーで1段目と共にロケットを宇宙へと打ち上げます。
セントールロケットから切り離され、
火星へと向かうキュリオシティ(Credit:NASA)
二段目には液体水素と液体酸素を推進剤とするRA10Aエンジンを持つセントール・ロケットが搭載され、99200ニュートンの推力を持ち、パーキング軌道への投入と、再点火による火星遷移軌道への投入を行います。
打ち上げ時のペイロードは全体で3893kgでした。内訳は火星までの航行に必要なクルーズステージが539kg、大気突入・減速・着陸に必要なカプセルやヒートシールドに降下ステージが2401kg、そしてキュリオシティが899kgでした。
打ち上げ後は火星への遷移軌道に投入され、何度かの軌道修正(TCM:Trajectory Correction Maneuvers)を経て約8ヶ月をかけて火星へと向かいます。TCMは6回まで計画されており、TCM-1は打ち上げから15日後、TCM-2は120日後、TCM-3は突入60日前、TCM-4は8日前、TCM-5は2日前、TCM-6は9時間前の実施計画でした。しかしTCM-4の時点で正確な誘導ができた事が確認された為、TCM-5および6は実施が見送られました。
クルーズステージと共にカプセルに格納されている、
降下ステージとキュリオシティ(Credit:NASA)
航行中、キュリオシティはPDS(降下ステージ)と共に大気突入用のカプセルに収められ、そこにさらにクルーズステージと呼ばれる火星への航行時のみに使用される機体が連結されています。クルーズステージの主な役割は搭載されたスタートラッカ(恒星姿勢計)で航行位置を把握して適切に火星軌道まで誘導する役割と、キュリオシティに搭載された原子力電池の不要な熱を放熱するためのラジエータとしての役割があります。
クルーズステージは毎分2回転(2rpm)でスピン安定であり、姿勢制御に1基あたり4.4Nの推力を持つ米エアロジェット社製の1液式ヒドラジンスラスタ「MR-111C」を8基搭載しています。また電力はラジエータの上に設置された太陽電池アレイで賄われます。火星大気突入の直前に分離されたクルーズステージはそのまま突入カプセルに近い軌道で火星大気圏に突入して燃え尽きます。